前回出展社の声

【CP+2023出展 東京印書館様】

CP+2023で初出展いただいた「東京印書館」様にCP+に出展したご感想をお聞きしました。

― まずは、貴社についてお聞かせください。

弊社は1947年に創業した印刷会社です。もともとは出版社である平凡社の印刷物を担当する会社として創業しました。当初は百科事典や辞典などの印刷物やグラフィック系の雑誌の印刷を主に手がけていましたが、近年では特に写真集や美術館の図録・art bookなど、色の再現に重点を置いた印刷物の制作が増えています。

最近では、写真集の製作実績が増えてきたことに伴い、個人の作家の出版をサポートする機会も増えてきました。弊社内にはプリンティングディレクターという役職があり、統括ディレクターの髙栁昇を中心としたチームがその役割を担っています。プリンティングディレクターは色再現の方向性について、作家のご要望をお聞きしながら、それを印刷物で再現する役割を果たしています。

例えば、森山大道さんや鬼海弘雄さんなど、著名な写真家の作品を担当させていただいており、有難いことにたくさんの写真家の方からご支持をいただいています。
最近では、これらの活動を自社のYouTubeチャンネルやウェブサイトで紹介し、作家の表現を形にするプロセスや制作の舞台裏のエピソードなども発信しています。また、プロフェッショナルやアマチュアを問わず、多くの写真家の方から自社のウェブサイトを通じて写真集制作のご相談を頂くことが増えている状況です。

― プリンティングディレクターの仕事は色の再現が売りとのことですが、どのような技術なのでしょうか。

最近では、多くの原稿がデジタルデータで提供されています。デジタルデータを紙上でどのように再現するかを考えるのが、プリンティングディレクターの役割です。いわば「色の翻訳者」ですね。モニター上で見る色は、それぞれのモニターによる個体差や、視聴者の環境やデバイスによって異なります。また、デジタルデータは基本的に光の3原色であるRGBで再現され、印刷では色の3原色CMYにスミを加えたCMYKの4色で再現されますが、CMYKになると色は濁る傾向があります。プリンティングディレクターは、写真家の意図を汲み取り、色を再現するにあたって、紙の選択や使用するインクの種類、印刷方式など、さまざまな要素を考慮します。最終的には、写真家からの要望に基づいて、印刷現場でもインクの量を微調整するなど、細かい調整を行いながら作品を仕上げていきます。プリンティングディレクターは、写真集の制作において印刷会社の司令塔のような役割を果たします。

― YouTubeチャンネルもお持ちなのですね。どのようなコンセプトで運営しているのでしょうか?

弊社のYouTubeチャンネルは、プリンティングディレクターの髙栁が中心となって3年ほど前にスタートしました。コンテンツとしては、製作に携わった写真集の紹介や、印刷会社の視点から色再現の工夫などをお伝えしています。また、制作現場をドキュメンタリー風に撮影し、写真集の制作過程や色再現の打ち合わせ、印刷立ち会いの様子などを紹介しています。これらの取り組みを通じて、読者の方々に写真集の魅力をより多面的に伝えることができればと考え、今まで継続しています。

― それでは、CP+2023にご出展を決めた理由を教えてください。

実は、2022年の会場イベントにも出展申し込みをしておりました。先ほどお話ししたように、弊社の情報発信活動を通じて、これまでは主に著名な写真家やプロの方々の作品作りをサポートしてきました。しかし、最近は趣味で写真を始められたような個人のお客さまからも、自分自身の写真集を作りたいという相談やお問い合わせが増えてきています。また、オンデマンドのフォトブックサービスや印刷通販を利用しても、思った通りの色が出ないといった相談も増えてきました。

そういった写真家の方々の思いに共感し、プロフェッショナルやアマチュアを問わず、より幅広い層のお客さまの作品制作をお手伝いしたいという想いから、弊社ではCP+という展示会に出展することを決めました。ここで写真家の方々とのつながりを築き、お互いにとって有益な関係を構築できればと思っています。

― CP+2023ではどのような製品・サービスを出展されたのでしょうか?

今回は非常にシンプルなアプローチで、「あなたの写真集を作りませんか?」というテーマで展示を行いました。弊社が手がけた写真集の展示をはじめ、比較的低価格で写真集を制作できるプランも用意し、実際にそれらのプランで制作した写真集のサンプルを展示しました。さらに、弊社のプリンティングディレクター陣もブースに常駐し、デジタルカメラの写真データを持ち込んでいただければ、その場でご要望をお聞きしながら印刷に適したデータを作成し、モニター上でご覧頂くコーナーも設けました。色調の方向性について、打ち合わせをしながら写真集を制作するというプロセスの一部を体験して頂きたかったというのが狙いです。

― ウェブサイトで事前に写真集サンプル制作のための写真作品を募集されていましたね。

はい、出展にあたって、今回は12ページの比較的少部数で簡易な製本の写真集を作るコースを用意し、そのためにコンテンツを提供していただける写真家さんを公募しました。反響の程は正直予測できませんでしたが、意外にも多くの方からご応募いただきました。最終的には10冊のサンプル写真集を10人の写真家さんにご協力いただき、約1か月で仕上げて展示しました。作家さんもCP+に来場していただき、SNSで作品の展示を広めて頂くなど、コミュニケーションが広がる面白さを感じました。写真集制作にはさまざまな可能性があることを、今回の展示を通じて再確認しました。

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― CP+2023に出展して良かったことや反響がありましたら教えてください。

今回の出展でどれほどの反響があるのか、正直なところ予想できませんでした。しかし、想像以上に多くの方が訪れてくださり、有難いことに忙しくお客様対応に追われる状況となりました。私たちが打ち出した「写真集を作りませんか」というシンプルなメッセージに対して、自身の作品を本にしたいという方が本当に多いことを再確認できましたし、どのように作ればよいのか、どのようなスタートを切ればいいのか、その手助けが必要な方も多いと感じましたね。具体的な仕様の設計や、好みの色合いに近づけるためのアドバイスなど、作家さんと一緒に考えながらサポートしていくことが求められると感じました。

また、展示会中に来場者の方々からご相談を頂いたことは勿論、CP+終了後も、弊社のウェブサイトやSNS経由で写真集制作についてのお問い合わせを頂くことが増えています。反響は現在(2023年6月)も続いています。ただ、自身の作品を写真集という形で一冊の本にまとめることは、すぐに思いついて依頼できることではありません。ある程度時間をかけて構想をまとめ、作家の方にとってベストなタイミングで本作りがスタートします。そのため、作家の方々がいざ写真集を作るというタイミングでお手伝いができるよう、展示会への出展やウェブサイト、YouTube等での情報発信等、弊社のサービスを認知して頂くための活動に継続的に取り組んでいきたいと考えています。

― 貴重なお話をありがとうございました!

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▼東京印書館公式ウェブサイト▼
https://www.inshokan.co.jp/

▼記事中にあるプリンティングディレクター髙栁昇さんのYouTubeチャンネルはこちら▼
https://youtube.com/@user-dj6in2qg9v