2024受賞作品ZOOMS JAPAN 2024

グランプリ

【作品名】

光の王国

【応募者名】

山西 もも

【プロフィール】

1995年大阪府生まれ。東京藝術大学工芸科鋳金専攻卒業。幼少期に父と行った登山の記憶から、学生時代は山岳部に所属し、日本の山々からアラスカやネパール、パキスタンの山を登る。そうした旅の経験を金属の彫刻や写真作品で発表している。

【受賞コメント】

グランプリに選んでいただき、とても嬉しく思います。このような貴重な機会をいただき、ありがとうございました。テクノロジーやAIが発達し、必ずしも人間が物を作らなくても良くなった世の中で、「私はなぜ作品を作るのか」という問いを大切に、これからも制作に励んでいきたいと思います。

本作は、ネパールのヒマラヤ山脈を旅したときに拾った化石と、その地域にあるムスタン王国(2008年までネパール領の自治王国)の洞窟住居から着想を得て、自作のピンホールカメラで撮影した作品である。私は2018年から現在まで、毎年ヒマラヤのどこか高峰を訪れるようになった。ある日、山道を歩いている時に踏んだ石が割れて、中からアンモナイトの化石が顕になった。その化石は、ヒマラヤがかつて海であった証拠であり、古代からの時間の集積を手に入れたような、そんな気持ちに私をさせた。ネパールの北西部に位置するムスタンという地域には、かつて使われていた洞窟住居の跡が点在している。浸食によって岩壁にぽっかりと空いた穴は、自然にできた「カメラ・オブスクラ」を彷彿とさせる。人のイメージを抽出したいという欲求はどこから来るのだろうか。化石や洞窟内部で起こるピンホール現象を想像すると、写真は近代だけのものではなく、古代から光が人間に投げかけたものなのだと感じざるをえない。ピンホールカメラで撮影したときのことは、携帯電話やデジタルカメラを使ったときよりも何故か鮮明に思い出すことができる。シャッターを開ける数秒の間、自分自身が息を止めて静止し対象物を見つめなければならないからだろうか。このカメラで撮影するということは、風景を切り取るというよりも、光や空気を針穴を通して箱の中へ収集している感覚が強い。旅を終えて暗室でネガフィルムから印画紙にプリントをする時、記憶と対峙しながら浮かび上がるイメージは私にとってアンモナイトの化石のように情報を内包している。ピンホールという原初的な構造で撮影することは、私にとって時間の地層を築き、記憶を化石のように可視化しようとする試みなのである。記憶の中に埋もれてしまった風景が再び浮上するとき、朧げな輪郭は過去と未来が繋がった回廊へと私を誘うのだ。

凖グランプリ

【作品名】

NEW NATURE

【応募者名】

駒瀬 由宗

【プロフィール】

1987年 岐阜県生まれ。2015年 写真新世紀にて佳作受賞。2017年 Sezon art Galleryにて個展“blackbox”を開催。主なグループ展に 2017年 3days EXHIBITION Sezon art Gallery、2016年 LUMIX MEETS BEYOND 2020 by Japanese photographers #4 などがある。

【受賞コメント】

この度は、準グランプリに選出いただきましたことを大変嬉しく思います。受賞作品は人の手が加わった自然をテーマにしています。下水処理場からの温排水が流れ込むこの場所を、果たして自然と呼ぶことが出来るでしょうか。写真という主観と客観の入り混じったメディアを通して皆さんとイメージを共有できることを楽しみにしています。

私が初めてこの場所を訪れた時、河原に見慣れない魚が横たわっているのを見かけた。魚はすでに絶命しており、数羽のカラスが肉や内臓をついばんでいた。調べてみると、ハクレンという中国原産の魚のようであった。釣り上げられた外来魚が陸に捨てられ殺されてしまうことは珍しいことではない。それ以来、何度かその場所に足を運んだが、その度に新しいハクレンの死体を見かけた。一度、まだ本当にわずかに息のあるハクレンを見かけたことがある。その時ふと、彼が今見ている景色が気になり、彼の目線にレンズを重ねてシャッターを切った。それ以来、放置されたハクレンを見かけるたび、同じようにして写真を撮るようになった。彼らが最後に見たのは一体どんな風景だっただろうか。私は、彼らが暮らしている環境にも興味がある。この見慣れない大きな外来の魚が暮らしているのは少し変わった場所である。下水処理場からの温排水が流れ込み、冬でも水が暖かい。人間の営みが環境に色濃く影響を与えており、元々ここにあった自然とは似ても似付かない。決して美しい場所ではないが、自然も人工も、外来生物も在来生物も一緒くたになり、濃密な生き物の気配に溢れている。私はこの場所が好きだ。作品を通して、私が感じたこの場所に生きる生き物たちのエネルギーを感じてもらいたい。作品は、ハクレンの見た最後の風景と、彼らが暮らす温排水を中心とした自然を撮影した写真、下水処理場の管轄地域の夜の光を重ね、人の営みのエネルギーを可視化した写真から構成されている。今回応募した10枚の写真はハクレンの暮らす温排水を中心とした自然を撮影した写真の中からセレクトされている。多くの写真は夜に撮影されており、闇の中に潜む生き物たちのエネルギーを表現するためにネガ画像を用い、闇を光へと転換している。また、夜間に一面生き物の気配に囲まれる体験を表現するため、波紋の写真をそれぞれの写真に重ねている。

ショートリスト

【作品のテーマ(タイトル)】

家族でファミレスに行ったことない人としか結婚したくない。

【応募者名】

彩乃

【作品のテーマ(タイトル)】

僕はその血が美しいと思った。

【応募者名】

遠藤 励

【作品のテーマ(タイトル)】

Anthropocene Plastics

【応募者名】

柴田 早理

【作品のテーマ(タイトル)】

写継ぎ

【応募者名】

田所 拓馬

【作品のテーマ(タイトル)】

ある緑内障罹患者の見え方

【応募者名】

豊吉 雅昭

【作品のテーマ(タイトル)】

Perigee and Apogee

【応募者名】

畑 直幸